20:55:12
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数ヶ月前までわたくしはマカロンを口にした事がございませんでした。
※(念のため)説明致しましょう。
マカロンとはアーモンド等を使った粉、砂糖、卵白を主原料とし円盤型に焼いたもので、間にクリームの類を挟んだカラフルな洋菓子でございます。
一年ほど前から、いえ、世間知らずの私が知らないだけでもっと前からでしょうか、マカロンが流行っておりましたね。
偶然開いた雑誌にも、ケーキ屋の店頭にも、はては前を歩く人のジーンズのポケットからのぞく携帯ストラップにまでマカロンがぶら下がっている。
こんなにモーションをかけられては食べたくならないわけがございません。
「ああ、どんな味かしら…誰かプレゼントしてくれないかなぁ」
そんなの自分で買えばいいじゃないの、などとおっしゃっいますな。
こんなにも思い焦がれている時には自分からは近付けないものなのでございます。
そんなある日の事です。
母が「マカロン買っちゃった~」と仕事から帰って参りました。
喜び勇み近寄ったわたくしの目に映ったのは、母の手から下がっているスーパーのビニール袋…。
マカロンのごとき高級菓子にまこと相応しくない。
「事務所の近くのスーパーで安かったの~、美味しいのよこれ」
と、ガサガサ取り出したのは、
【まころん】。
なんでもピーナッツの粉を卵白などと一緒に焼いたものだそうで……。
かりかりした素朴なお菓子でした。
確かに原料は似ている。(名前も)
確かにこれもとても美味しかった。
でもなんか違う。
マカロンへの思いはますます強くなったのでございました。
※まころんの名誉のために書き添えますが、これも本当に美味しいんですよ! 割とよくスーパーなどで売っているみたいです。おすすめ。
そんな事があってから暫くして学校で偶然会った級友の一人が何故か私に言いました。
「私今すごい大きなマカロン食べたんです」
「えっ、マ…マカロン…?」
「見て下さい」
彼女の手には巨大マカロンを保護していたと思われる、掌からはみ出るほどの紙の筒が。
「す、すごいね。」
「ね、大きいですよね! 私こんな大きなマカロン初めて食べましたよ!」
「ホントだね、こんなの見た事ないね、あはは」
私ね、一度も食べたこと無いんだよ。
と、どうしてか言えませんでした。
貴方は何度も食べたのですね。
悲しくなってきました……。
翌日。
鎌倉の高級洋菓子店へ鼻息荒く駆け込むわたくしがいたのでございます。
今にして思えばこの時がマカロンに対するわたくしの気持ちが最高に高まった瞬間だった気が致します……。
ショーケースにケーキと一緒に並ぶ、生チョコがサンドイッチされた色とりどりのマカロン。
直径3センチ(くらいに見えた)で200円以上する。高いよ!!
いやいや、もうすぐバレンタインだ。(※これは二月のお話です)
このマカロンをお世話になった人たちにプレゼントする事にしよう。
今から買うのはその下見(味見)なのである。
10個買って留守だった父以外の家族で食べました。
皆見るのも初めてだったのでございました…。
「おいしい! もっと買ってきて。」
「おいしいけど小さくて一口だな。」
「うん。いいね。」
喜んで食べる子供達。
その時でした。母が言ってはならぬことを言い放ったのでございます。
「美味しいけど、ま、こんなもんかって感じ? ワタシまころんでいいわ。そうだ、まころん食べたい! まころん持って来てー」
「ミもフタも無い!」
「まころんなんてお母さんこの間全部食べちゃったじゃない。もう無いよ!」
「全部食べてから言うな!」
………暗転。
期待が大きすぎたのかもしれない。
わたくしの中でマカロンはすっかり理想化されてしまっていたのかもしれません。
それ以来マカロンの顔は一度も見ておりません。
でも……今も洋菓子店の店先に積み上げてあるマカロンタワーの後ろ姿を遠くから見るたび、胸がズキンと痛みあの時の味がよみがえるのです。
マカロンはほろほろとしつつも、ふんわりした生地に、冷たい生チョコレートがほんのり苦くとろけるようでございました……。
※(念のため)説明致しましょう。
マカロンとはアーモンド等を使った粉、砂糖、卵白を主原料とし円盤型に焼いたもので、間にクリームの類を挟んだカラフルな洋菓子でございます。
一年ほど前から、いえ、世間知らずの私が知らないだけでもっと前からでしょうか、マカロンが流行っておりましたね。
偶然開いた雑誌にも、ケーキ屋の店頭にも、はては前を歩く人のジーンズのポケットからのぞく携帯ストラップにまでマカロンがぶら下がっている。
こんなにモーションをかけられては食べたくならないわけがございません。
「ああ、どんな味かしら…誰かプレゼントしてくれないかなぁ」
そんなの自分で買えばいいじゃないの、などとおっしゃっいますな。
こんなにも思い焦がれている時には自分からは近付けないものなのでございます。
そんなある日の事です。
母が「マカロン買っちゃった~」と仕事から帰って参りました。
喜び勇み近寄ったわたくしの目に映ったのは、母の手から下がっているスーパーのビニール袋…。
マカロンのごとき高級菓子にまこと相応しくない。
「事務所の近くのスーパーで安かったの~、美味しいのよこれ」
と、ガサガサ取り出したのは、
【まころん】。
なんでもピーナッツの粉を卵白などと一緒に焼いたものだそうで……。
かりかりした素朴なお菓子でした。
確かに原料は似ている。(名前も)
確かにこれもとても美味しかった。
でもなんか違う。
マカロンへの思いはますます強くなったのでございました。
※まころんの名誉のために書き添えますが、これも本当に美味しいんですよ! 割とよくスーパーなどで売っているみたいです。おすすめ。
そんな事があってから暫くして学校で偶然会った級友の一人が何故か私に言いました。
「私今すごい大きなマカロン食べたんです」
「えっ、マ…マカロン…?」
「見て下さい」
彼女の手には巨大マカロンを保護していたと思われる、掌からはみ出るほどの紙の筒が。
「す、すごいね。」
「ね、大きいですよね! 私こんな大きなマカロン初めて食べましたよ!」
「ホントだね、こんなの見た事ないね、あはは」
私ね、一度も食べたこと無いんだよ。
と、どうしてか言えませんでした。
貴方は何度も食べたのですね。
悲しくなってきました……。
翌日。
鎌倉の高級洋菓子店へ鼻息荒く駆け込むわたくしがいたのでございます。
今にして思えばこの時がマカロンに対するわたくしの気持ちが最高に高まった瞬間だった気が致します……。
ショーケースにケーキと一緒に並ぶ、生チョコがサンドイッチされた色とりどりのマカロン。
直径3センチ(くらいに見えた)で200円以上する。高いよ!!
いやいや、もうすぐバレンタインだ。(※これは二月のお話です)
このマカロンをお世話になった人たちにプレゼントする事にしよう。
今から買うのはその下見(味見)なのである。
10個買って留守だった父以外の家族で食べました。
皆見るのも初めてだったのでございました…。
「おいしい! もっと買ってきて。」
「おいしいけど小さくて一口だな。」
「うん。いいね。」
喜んで食べる子供達。
その時でした。母が言ってはならぬことを言い放ったのでございます。
「美味しいけど、ま、こんなもんかって感じ? ワタシまころんでいいわ。そうだ、まころん食べたい! まころん持って来てー」
「ミもフタも無い!」
「まころんなんてお母さんこの間全部食べちゃったじゃない。もう無いよ!」
「全部食べてから言うな!」
………暗転。
期待が大きすぎたのかもしれない。
わたくしの中でマカロンはすっかり理想化されてしまっていたのかもしれません。
それ以来マカロンの顔は一度も見ておりません。
でも……今も洋菓子店の店先に積み上げてあるマカロンタワーの後ろ姿を遠くから見るたび、胸がズキンと痛みあの時の味がよみがえるのです。
マカロンはほろほろとしつつも、ふんわりした生地に、冷たい生チョコレートがほんのり苦くとろけるようでございました……。